2018年6月ごろの古い話になるが、ソニーが黒字回復するというニュースが飛び交った。
あれほど家電不況、スマホ機器の減益から復帰したとは。
そこで、内訳をみてみると、どうも家電、スマホといったものが貢献したわけではなく、ゲーム、アニメ部門の好業績が上げらえる。
ゲームでは、ネットワークサービスのインフラコストを月額会員制サービスにすることによって収益を確保する体制に持って行ったことは大きい。
ネットワークサービスとは、ソフトのダウンロードサービス、および対戦相手とのコミュニケーションツールなどなどゲームにおけるネットワークサービス全体のこと。
ソニーはゲームの無料提供をオファーとしてもっともコストのかかるインフラを月額課金制にしたことにより、収益を得られる体制となった。
さてさて、本題のアニメ部門だが、ソニー=アニメ?と考える人もいるだろう。
実は、ソニーミュージックエンターテイメント100%子会社にアニプレックスというアニメ会社がある。
これの収益進捗率がものすごく高い。
ソニー全体の利益額から言えば3%くらいになるが、3%?大したことないじゃないと考えるのではなく、単体で考えれば、収益率がものすごくいい会社なのだ。
コンテンツビジネスは、これからどんどん伸びる要素を秘めている。
アニメ業界とは、どんな収益構造になっているのか?
クールジャパンと言った運動があった。そこに必ず出てくるのが、日本のアニメ。
世界中から、日本のアニメを求めて旅行者がやってくる。
アニメの制作会社がすごい収益を上げているのかというと、そうではない。
アニメ市場が2016年から2兆円を超えたが、アニメ制作の売り上げは全体の10%程度。
実は、市場の売り上げの大半は、2次利益だ。
2016年とデータは古いが、アニメ市場の売り上げ内訳を記しておくと
テレビ局アニメ番組売上:1,059億円
劇場アニメエンドユーザー売上(劇場アニメの興行収入):663億円
アニメビデオグラムエンドユーザー売上:788億円
アニメ映像配信エンドユーザー売上:478億円
アニメ関連商品エンドユーザー売上:5,627億円
アニメ音楽商品エンドユーザー売上:285億円
海外アニメ関連エンドユーザー売上(上映・放送・ビデオ・MDなど):7,676億円
アニメ作品を使用したパチンコ・パチスロ台の出荷高の推計値:2,818億円
ライブエンタテインメント売上の合算:615億円(シネマトゥデイより参照)
内訳をみると、ちょっと驚く。
アニメ関連グッズ、DVD等の販売、海外放映権、キャラクター使用料がアニメ制作より大きな収益源となっている。
なぜ?制作会社がそれほど収益を得られないのか?
通常であれば、作り手に権利収益の大半が入り込むように思われる。
でも、なぜそうではないのか?
これは、アニメ制作の場合、政策委員会方式がとられていることによる。
製作委員会方式とは、アニメを作るための資金調達方法の一種で、企画、販売、制作等、様々な会社が共同で出資する方法のこと。
因みに、細かいことだが、制作はアニメを実際につくることで、製作は、アニメに出資して企画、管理、運営していくこと。
このことにより、著作権権利が分散され、出資額に応じて著作権権利が生じる。
そのために制作会社よりも製作会社に収益がいくことになるのだ。
映画やアニメは、よく漫画や小説で売れたものを題材とすることが多い。
その作者に支払われる著作権料は100万円~1000万円が相場のようだ。
それでは、考えた人間が損をするのではと思われがちであるが、その映画やアニメが売れることにより、漫画や本も売れるようになるので、その分の著作権料が入ってくるので、持ちつ持たれつといったところだろうか。
出版業界の衰退から脱却へ
本を読む人が少なくなり、出版不況と言われ久しい。
そんな中で、カドカワ書店というのは不思議な会社だ。
ライトノベルだけで見てみると、カドカワ系列は、全体の67.23%。
■レーベル別売上 2016年11月21日~2017年8月20日
*1位 2,864,339部 22.71% 電撃文庫→カドカワグループ
*2位 1,674,191部 13.27% MF文庫J→カドカワグループ
*3位 1,252,003部 *9.92% 角川スニーカー文庫→カドカワグループ
*4位 1,233,875部 *9.78% 富士見ファンタジア文庫→カドカワグループ
*5位 1,000,513部 *7.93% GA文庫
*6位 *,569,168部 *4.51% エンターブレイン→カドカワグループ
*7位 *,411,881部 *3.27% JUMP j-BOOKS
*8位 *,401,677部 *3.18% ヒーロー文庫
*9位 *,318,407部 *2.52% 講談社BOX
10位 *,281,532部 *2.23% GCノベルズ
11位 *,265,420部 *2.10% 角川ビーンズ文庫→カドカワグループ
12位 *,262,589部 *2.08% オーバーラップ文庫
13位 *,242,769部 *1.92% アルファポリス
14位 *,232,202部 *1.84% MFブックス→カドカワグループ
15位 *,198,231部 *1.57% カドカワBOOKS→カドカワグループ
16位 *,120,257部 *0.95% ファミ通文庫→カドカワグループ
17位 *,118,951部 *0.94% ガガガ文庫
18位 *,104,860部 *0.83% HJノベルス
19位 *,*97,980部 *0.78% オーバーラップノベルス
20位 *,*90,882部 *0.72% 講談社ラノベ文庫
21位 *,*89,892部 *0.71% モンスター文庫
22位 *,*76,331部 *0.61% アース・スターノベル
23位 *,*72,794部 *0.58% HJ文庫
24位 *,*43,227部 *0.34% レジーナブックス
25位 *,*42,759部 *0.34% このライトノベルがすごい!文庫(単行本)
26位 *,*41,891部 *0.33% 講談社ノベルス
27位 *,*40,694部 *0.32% TOブックス
28位 *,*38,584部 *0.31% ビーズログ文庫→カドカワグループ
29位 *,*36,006部 *0.29% ダッシュエックス文庫
30位 *,*33,671部 *0.27% アリアンローズ
**位 *,357,226部 **.**% その他計12,614,802部
KADOKAWAでまとめると8,480,881部でシェア67.23%
ライトノベルの売り上げ推移を見ると
2011~2016年で28.9%増と右肩上がりに拡大している。(「ORICONエンタメ・マーケット白書2016」より)
金額は400億円前後といったところだ。が、実のところ価値としてはこの10倍以上は利益をもたらす可能性を持っている。
なぜなら、このライトノベル、2次販売が可能な商品だからだ。
つまり、アニメ化、関連グッズ販売、海外映像権利、海外書籍権利、音楽CD、キャラクター使用料などなど2次販売で巨大な利益をもたらす。
近年、特に反響が大きいのが「オーバーロード」「この素晴らしい世界に祝福を」「RE:ゼロから始まる異世界生活」「幼女戦記」などアニメ化し、ヒットを増産している。
出版業界の売り上げ推移を記載すると・・・
(業界動向サーチドットコムより参照)
ベネッセは、進研ゼミ。月額課金で学習塾を代替するものだから、あえて違うととらえると、カドカワの進捗がものすごいということがわかるだろう。
カドカワのグループ会社は何?
会社を語るうえで、表面の1社だけでは、業務の多様化のためよくわからないケースが多い。
そこで、グループ企業を見ると、企業内容がわかりやすい。
株式会社ドワンゴ
株式会社スパイク・チュンソフト – ゲームコンテンツの企画・開発・販売・運営。
Spike Chunsoft, Inc. – スパイク・チュンソフトの米国現地法人
株式会社MAGES. – ゲーム事業、映像・音楽事業、イベント事業、マネジメント事業、番組制作事業、店舗事業。
株式会社MAGES.Lab
株式会社バンタン – クリエイティブ分野に特化したスクール運営(全日制・キャリア・高等学院)。
株式会社大百科ニュース社
株式会社Gzブレイン
株式会社KADOKAWA – 出版、映像、ゲーム、玩具、音楽、イベント、ネットメディア事業を行うカドカワグループの中核企業。1954年4月に株式会社角川書店(初代)として設立。2003年4月に株式会社角川ホールディングス、2006年7月に角川グループホールディングスへの商号変更を経て2013年6月22日に現商号変更。(ウイキペディアより参照)
このほかに子会社が多数。メディアワークスやアスキーなどなど。
こう見てみると、完全にメディアミックス型の企業に変身しているのがわかるだろう。
このように、表面では見えないが、裏ではものすごく世界が動いている。
AIやITが世間では踊っているが、エンタメの世界はものすごく動きが早いのである。
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