スルガ銀行不正融資事件について
世の中、ニュースでスルガ銀行の不正融資の問題が取り沙汰されている。
そこで、何が問題なのか?ということをまとめてみた。
簡単に結論から言うと、返ってくる見込みのないところにお金を貸して、
それが不良債権化して銀行に多大な損をもたらしたということ。
その結果、スルガ銀行にお金を預けていた人や出資をしていた人にとって
多大な損失をもたらした。
会社のお金をスルガ銀行に預けて決済をしてる社長さんなんか大慌てだと思う。
だって、支払いができなくなる可能性が高くなるじゃない。
そうなると連鎖倒産。
何の過失責任もなく、ただスルガ銀行を利用していただけなのに
人生路頭に迷ってしまう。
これってあってはならないこと。社会問題。
スルガ銀行に出資していた人たちだって、株価が下がることによって、
資産が目減りしてしまい大損害だ。
別にスルガ銀行に預金していない人だって、年金の運用先にスルガ銀行の株が入っていたら、影響を被る。
じゃあ、なぜこのような事態が起こってしまったのか?をいっしょに考えてみよう。
スルガ銀行の生き残り戦略
スルガ銀行は静岡県沼津市に本社があり、隣の神奈川県を中心的な営業エリア
にした地方銀行。
同じエリアには都市銀行をはじめ、静岡銀行や横浜銀行などの地方銀行がひしめいており
厳しい営業環境下に置かれていた。
銀行業務はお金を貸して利ザヤを稼ぐというのが仕事。
しかし、ライバルがあまりに多いため、スルガ銀行は
地場の優良企業に対して貸し出し先をあまり開拓することができなかった。
そんな時、昭和60年(1985年)岡野光喜氏が頭取に就任した。
頭取はライバルが多い厳しい環境下では企業相手にお金を貸すというビジネスモデル
では、生き残れないと判断。
生き残りをかけて法人融資から個人融資へと融資先をチェンジしたんだ。
当時の銀行は大口でない融資先の個人融資を軽視していた。理由は小口でさほど儲からないし
今までどおり優良法人先にお金を貸していれば、利益が上がっていたからね。
岡野頭取は、スルガ銀行を生き残らせるために個人向け融資を中心に
融資展開をしていき、10年後華を開かせた。
審査基準を緩めた住宅ローンや独身女性向けの住宅ローン、個人向けカードローン
や不動産投資向け融資などでね。
お金をなかなか借りれない人に対して、小口融資をしていく。
その代わり金利を高めに設定して高い収益率を上げていくという手法で。
ネットバンキングも積極的に展開し、全国エリアにしたのもこの時期だ。
ここまでは良かった。
狂い始めたスルガ銀行の戦略
平成26年に始まった日銀の金融緩和政策から狂い始める。
都市銀行や地方銀行など法人融資を中心にしていた銀行が日銀金融緩和のおかげで
貸出金利を低めに抑えられたために利益が取れなくなっていった。
そのため、各銀行は生き残りをかけて法人中心から個人向け市場へ収益を上げるためにシフトしてきたんだ。
(この頃、銀行から住宅ローン見直しませんか?とご案内状が頻繁に来ませんでしたか?)
当然、スルガ銀行も顧客獲得争いに巻き込まれる。
スルガ銀行の貸出金利は高めに設定されていたため、営業攻勢をかけられて
他行に借り換えられるケースが多くなってきた。
そこで、スルガ銀行は生き残りのためにシェアハウスなどの不動産投資融資へだんだんと
シフトしていくこととなる。
シェアハウスの融資は1件当たり1億円前後の融資となり、金利4%くらいの
高い金利で貸し、そのままそれがスルガ銀行の収益源となった。
シェアハウス融資スキーム
ここでシェアハウス融資のスキームを考えてみようと思う。
この融資スキームには「サブリース」と「一括借り上げ」の
言葉が頻繁に出てくるので、理解すると話が分かりやすくなる。
シェアハウスにしろ、マンションにしろ、その物件一棟を買う人はオーナー。
オーナーは、シャアハウスやマンションを運営したことがないので家賃を徴収したり
住居者を集めたり管理したりすることができない。
そこで、運営管理を任せる専門の業者がいれば、費用を払っても良いので任せたいと考える。
運営管理会社は、オーナーから依頼を受け物件を管理し、管理費用を差し引き家賃をオーナーに
支払う。
実際は、オーナーが運営管理会社にそのシェアハウス、マンションを一括借り上げしてもらい、
家賃から費用を差し引いた金額をオーナーに支払う。
一括借り上げとは、シェアハウス、マンション、アパートなど1棟丸々運営管理会社に借りてもらい
家賃は運営管理会社が払うというもの。
当然借りている住人は家賃を運営管理会社に払う。
この運営管理する会社に、オーナーが、シェアハウス、マンション、アパート等を一括借り上げ
してもらって、その費用を差し引き家賃をもらうシステムのころをサブリースと言う。
実際の融資スキーム
大抵の場合は、オーナーありきではなく、運営管理会社が先。
つまり、運営管理会社がシェアハウス等を企画し販売する。
「シェアハウスを我々が一括借り上げし
オーナーに家賃30年支払うことを保証します。計算すると利回り7%となりますから
このシェアハウスを買いませんか?」と不動産セミナーなどを使ってオーナーを募る。
この運営管理会社がスルガ銀行と結託しており、オーナーがそのシェアハウスを購入する場合
スルガ銀行の融資からということになる。
融資が決まればスルガ銀行としては、万々歳。
約束通り運営管理会社から家賃が入るなら、何ら問題のない仕組みだ。
オーナーも万々歳だし、
運営会社も万々歳なわけだ。
サブリースの落とし穴
だが、このサブリースという制度に問題があるのだ。
運営管理会社は家賃保証30年とかセールストークを使い、シェアハウス、マンション、アパート等
をオーナーに建てさせるが、法律上、運営管理会社は家賃保証をする必要がなく、
運営会社の方から賃料減額やオーナーとの契約解除をすることができる。
つまり、オーナーとしては、その家賃保証があるので、安心して
銀行借り入れをしたのに、住人が入らないなどの理由から家賃減額を迫られると
たちまち収益の計算が狂い破綻してしまうのである。
だから確実に住居者が入る状況であれば問題ないのだが、そうでない場合は
困った事態が生じる。
ああ!なんて恐ろしいと考える人は多いと思うけど、
ここまでは良くある話で、恐らくどこの銀行だってやっていると思う。
借入したオーナーには可哀そうだけれども、自己責任でしょで終わってしまう話。
世の中そんなに甘くありませんよ。実際うまくいっている人もいるわけだし、
買ったあなたが悪いで終わってしまいます。
空室がなければ何ら問題がないのですからね。
スルガ銀行の場合は別の問題でニュースになっている
ここから先の不正融資というのがいけない。
問題のスルガ銀行不正融資だ。
スルガ銀行は融資額を増やすために、
もっと融資額を増やしてこいと行員に発破をかけた。
行員は、仕方がなく融資額を増やすために、シェアハウス案件の融資基準を
引き下げた。
つまり、本来借入ができない人に対して、
融資審査書類をねつ造し融資をしてしまった。
銀行の数字上は融資額が増え、増収となる。
しかし、先ほど述べた通り、空室がないシェアハウス物件というなら問題も
起こらなかったろうが、シェアハウスの供給過剰により
どんどん入居率が下がっていき、それにともない融資の焦げ付きが増えていった。
しかも行員は、シェアハウスはこれから空室が増えるだろうと知っていた。
これがこの事件の真相だ。
その結果、スルガ銀行の信用を失墜させ、倒産危機に陥らせている。
じゃあどうすれば良かったのだろうか?
本来は買い手であるオーナーがしなければならないことなのだと思うけど、
銀行サイドも担保保障でお金を貸すのではなく、その物件の収益価値から
融資すれば、問題なかったのではないかと考える。
個人に融資するのではなく、その物件が今後もたらすであろうキャッシュから
融資する仕組み。
目論見に失敗したら物件差し押さえでチャラになるノンリコースローンみたいなね。
だって、銀行はお金じゃぶじゃぶ余ってて、お金を貸したい。
でも貸し出し先はない。
一般の人は、一生入ってくる収入が欲しい。
建設業の人は、新しい物件を建設したい。
だったらそういう仕組みがあれば、皆幸せだし、いいんじゃないかなあと思うのは私だけかな??
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